みなさん経済指標をちゃんと見ていますか?ちまたでは、ファンダメンタルズ分析は意味がない。テクニカル分析だけしてればいい。と軽視されがちな経済指標ですが、実は経済指標を読み解くことで多くの情報を得られます。
ただ。実際に経済指標を読み解こうと思っても、CPI、雇用統計、GDPなどさまざまな経済指標があり、経済学の知識も関わってくるので、なにをどう見たらいいかわからない!というのが実情だと思います。
そこで今回からシリーズで、ファンダメンタルズをトレードに役立たせる読み方のコツを伝授します!
アメリカの経済指標が一番大事!
まず一番最初に重要なことをお伝えします。
読み解く経済指標は「アメリカ」の指標です!
なぜアメリカの経済が重要かというと、アメリカが世界のトップオブトップだからです。
経済大国であり世界一であるアメリカの景気が悪くなれば世界の景気も悪くなり、アメリカの経済が良くなれば世界の経済も良くなります。
ですので、アメリカの経済を読めば、世界の情勢も読めることになるのです。
よって、これから話すファンダメンタルは米国の話がメインとなります。
中央銀行が景気をコントロールしている
いちばん最初に理解しなければいけない用語は「中央銀行」です。中央銀行を理解することで、経済の動きが非常に明確になります。
中央銀行
中央銀行は簡単にいうと、国の通貨の発行権をもつ銀行です。日本であれば日本銀行。アメリカでは連邦準備理事会(FRB:Federal Reserve Board)と呼ばれています。
- Federal Reserve Board(FRB)…アメリカの中央銀行の制度を指す言葉。アメリカには中央銀行にあたる銀行、連邦準備銀行(FRB:Federal Reserve Banks)が12地区に存在する。それら統括してアメリカ全体の中央銀行制度としている。
また、銀行という名前を持っていますが、我々一般人は利用はできず、お金を預けたり、利用できるのは、政府とメガバンク(大手銀行)となっています。
中央銀行のお仕事
FRBの中の人たちは何をしているかというと、アメリカの「雇用の最大化」と「物価の安定」を実現できるように日々お仕事をしています。この2つの目標を「デュアルマンデート」と呼びます。
- 雇用の最大化…働く人を増やすこと。失業者を減らすこと。
- 物価…商品やサービスの値段
このデュアルマンデートを実現するために、何をしているかというと景気のコントロールを行っています。
働き先がなくお金が稼げない人がたくさん増えると、景気は悪くなります。
また、物価が異常に上がりすぎると、消費者である我々は生活が苦しくなり景気が悪くなります。逆に物価下がりすぎると物を売る側の稼ぎが減り、結果的に景気は悪くなります。
このように雇用と物価は、景気と密接な関わりがあります。この景気をコントロールすることで、間接的に雇用を最大化し、物価を安定させるのがFRBの役目です。
景気の良し悪しの考え方
景気がいい状態というのはGDPが高い状態のことを指します。GDPとは「その国でどれだけのお金を生み出したか」を測る指標です。
「その国でどれだけのお金を生み出したか」を言い換えると、「どれだけお金を消費したか」となります。お金を使うためには、使う分のお金を生み出さなければなりませんよね。
ですので、みんながお金を使わず貯蓄ばかりに回すと景気は悪くなり。たくさん使えば使うほど景気は良くなります。
お金は血液。という例えがあるように国の中でお金が循環すればするほど景気は良くなり、成長していきます。
金融政策を行って景気のコントロールを行う
では中央銀行はどのように景気をコントロールしているかというと「金融政策」を実施してコントロールを行っています。
金融政策の施策はいくつかありますが、そのなかでも「政策金利」を上げ下げすることで景気をコントロールすることができます。
政策金利とは
政策金利とは、その名の通り金利です。みなさんも住宅ローンや金融機関でお金を借りると、この金利分のお金を支払うことになります。
言い換えると、「お金の貸し借りの際に発生するレンタル料」と言えます。TUTAYAなどでレンタルする際に支払う使用料と同じような感じです。
みなさんが知っているローンと違うのは、お金の貸し借りをする相手がちがいます。
中央銀行の説明でも軽くふれましたが、中央銀行の取引先はメガバンク(大手銀行)です。中央銀行と銀行とのお金の貸し借りで発生する金利を「政策金利」と呼びます。
銀行はこう考えよう
銀行も利益を求める会社と考えると理解がしやすいです。お金も一つの商品だと考えると、銀行はお金の小売業者と考えられます。
中央銀行から貨幣を仕入れ、我々消費者に貸し付ける。これが銀行業だと理解しておきましょう。
政策金利が上下するとどうなる
では、政策金利が上下するとどのようなことが起きるか説明します。
政策金利が上がった場合
政策金利が上がると、今まで以上に金利を払わなければいけなくなるので、メガバンクは中央銀行からお金を調達しにくくなります。つまり、商品在庫がどんどん減少していくわけですね。
そうなると、お金という商品の需要は一定以上はあるため、需要と供給のバランスが崩れ(需要>供給)商品の値段が上がります。しかし通貨の価値自体は変えることができないため、消費者に負担させる金利を上げていきます。
金利が上がると、会社や消費者はお金が借りづらくなってしまいます。
会社はお金を借りて、設備投資や利益活動を行うので、金利が高まるとお金を借りづらくなり、設備投資ができなくなり業績が落ちてしまいます。
消費者はローンなどが上昇し、住宅や車を買うことを諦め、消費が減っていきます。
お金の循環がなくなり、政策金利が上がると景気は悪くなります。
よって政策金利を上げることを「金融引締」と言います。
政策金利が下がった場合
政策金利が下がった場合は先程の逆で、景気が良くなります。
メガバンクは安くお金を仕入れることができるため、値段を安くしてでも在庫を減らすことになります。(需要<供給)ただ、説明したように通貨の値段を変えることはできないため、金利を安くします。
金利が安くなると、会社や消費者はお金を借りやすくなります。
会社は今まで異常にお金を借りて、設備投資にまわし利益をだすようになります。
消費者はローンが下落し、住宅や車などを購入し、消費が増えます。
結果、お金が循環するようになり、政策金利が下がると景気は良くなります。
よって政策金利を下げることを「金融緩和」と言います。
景気を悪くする必要があるのか?
政策金利を上げ下げすることで景気のコントロールをしていることが理解できたと思います。
ただ、景気が悪いときによくなるようにする施策はわかるが、景気が良いときにわざわざ悪くする意味があるのか?という疑問を持った方もいるかもしれません。
景気が良くなりすぎると、物価が上昇しすぎてしまうからです。物価が上昇しすぎると、生活費が払えなくなってしまいます。
ですので景気というものは、悪くなったら金融緩和され、よくなると金融引き締めされ、中央銀行に常にコントロールされているのです。
結局なにを見れば良い?
以上のことから、金利が上がったら景気はのちのち悪くなる。金利が下がったら景気はのちのち良くなる。と覚えましょう。
ここで、景気を表す指標として株価がよく用いられ、金利と株価は逆相関の関係になります。
ここで注意ですが、金利上昇が必ず株価下落につながるわけではありません。
政策金利が上がるタイミングは、「景気が良くなりすぎて消費者が困ってしまう」状態です。単純に景気が良いだけだと給料もあがり、会社の利益もあがり株価は上昇傾向になります。
以上、中央銀行と金融政策の説明でした。次回では、金融政策の仕組みについて深く解説していきます!
まとめ
中央銀行は景気が悪くなると、政策金利を下げて景気を底支えする。(金融政策)
中央銀行は景気が良くなりすぎると、政策金利を上げて、景気を落ち着かせる(金融引締)
中央銀行…国の景気をコントロールする機関
FRB…アメリカの中央銀行
金融政策…中央銀行が景気をコントロールすること
金融引締…景気を悪くする金融政策
金融緩和…景気を底支えする金融政策
政策金利…中央銀行が大手銀行にお金を貸す際の金利
デュアルマンデート…FRBが実現する目標