前回は中央銀行と景気コントロールの仕方をお伝えしました。
今回では、政策金利が相場にどのような影響を与えるか具体的に見ていきます。
政策金利の上げ下げが意味するところ
前回、政策金利を上げ下げすることにより景気をコントロールしていることを説明しました。
軽く復習すると、
政策金利が上がるとお金が借りづらくなり景気が落ち着く(金融引締)
政策金利が下がるとお金が借りやすくなり景気が上向く(金融緩和)
ということでした。
この政策金利の上げ下げが意味する直接的な部分を今回説明いたします。
金利=お金の価値
最初に結論を伝えると。「金利=お金の価値」です。株価のファンダメンタルズが会社の業績とするならば、通貨のファンダメンタルズは金利となります。
日本円、ユーロ、ポンド、ドルどれが一番価値があるか?という問いに対して、一概に答えることはできません。なぜなら国ごとに、平均月収や物価が異なっておりGDPもさまざまです。
そこで、株式のように持っていると利益が生じるか否か。という観点で価値を考えると、「金利が高い=価値が高い」ということになります
貸す側で考えてみる
ではなぜ、金利高い=価値が高い。ということになるかというと。金利=レンタル料とお伝えしました。ですので、借りた際に支払う使用料ということです。
金利10%の場合、100円のものを借りたら、10円分を利子として支払うことになります。
では逆に、貸す側になった場合、金利分を受け取ることになりますよね。
例を考えてみましょう
日本円を銀行に預けておくと年に1%金利が受け取れます。
アメリカドルを銀行に預けて置くと年に5%金利が受け取れます。
このような条件の場合、円を銀行に入れるより、アメリカドルを預けたほうが得をしますよね。
ですので、持っている日本円をドルに変える。ドルを購入するという流れが発生し、金利が高い通貨は買われやすい(通貨高になりやすい)のです。
銀行にお金を預けるという意味
銀行に口座を作りお金を入れるという行為は、よく貯金と説明されますが実際には違います。
入金したお金は、銀行によって他の人に貸出、運用されています。ですので正確には、銀行にお金を貸しつけている状態です。ある種の投資とも言えます。
金利が高すぎる通貨は注意
金利が高い通貨=価値がある。とお伝えしましたが。一点だけ注意点があります。
南アフリカランド、メキシコペソ、トルコリラなど高金利通貨は、アメリカドルや日本円よりも価値があるのか。というとそれは別です。
経済が安定していない発展途上国は、意図的に金利を高くすることで自国の通貨の流出を防いでいます。
金融引締と緩和のもうすこし具体的な説明
ここまで「金利=通貨の価値」ということを説明しました。これを理解することで中央銀行の金融政策の意図が見えてきます。かなり文字が多くなりますが頑張ってついてきてください。
景気が悪くなったら利下げを行う意図
景気が悪くなると金融緩和政策として、政策金利の引き下げ(利下げ)を行います。これを通貨の価値という概念で説明します。
景気が悪くなると、給料が下がります。給料が下がるとお金を使わなくなるので買い控えが起こります。モノを買うより貯金をするようになります。そうすると企業は誰も商品やサービスを買ってくれなくなるので、値下げをしてまでモノを売ります。値下げをすると企業の利益は下がってしまいます。企業の利益が下がると給料が下がり買い控えが起こり…とこのように、モノの値段が下がっていく現象をデフレーション(デフレ)といいます。
デフレは相対的にお金の価値が高まる
モノ値段が下がるということは相対的に、通貨の価値が高まる。ということになります。実際にモノを買うよりお金として自分の手元にあったほうがいい。ということになるので、通貨の価値が高まっている状態です。
需要過多になるのでお金の価値が高まる
そして、みんながみんな出費をやめ、買い控え、貯金をするので、お金の循環がなくなります。お金の循環が無くなるということはお金が得にくい状態になります(供給がなくなります)しかし、みんなはお金がほしい状態。ですのでお金の価値が高まりすぎている状態といえます。
なので、お金の循環を良くするために強制的に金利(お金の価値)を下げるのです。
景気が良くなり過ぎたら利上げを行う意図
景気が良くなりすぎると金融引締め政策として、政策金利の引き上げ(利上げ)を行います。これを通貨の価値という概念で説明します。
景気が良くると、商品やサービスの値段が釣り上がります。みんながみんが出費をし、モノを買うのでものを売る企業は儲かり、給料があがります。そしてもらった給料でモノを買うので、商品やサービスの値段がどんどん上がっていきます。このように商品やサービスの値段が上がることをインフレーション(インフレ)と言います。
インフレは相対的にお金の価値が下がる
モノの値段が上がるということは、相対的に通貨の価値が下がる。ということになります。品薄になったPS5やSwitchなどを転売すると儲かるので、お金を払ってでもPS5にしたほうがいい状態ということになります。
供給過多になるので価値が下がる
そして、みんながみんな出費をしていくので、お金の循環が多くなります。お金の循環が多くなるということは、お金が得やすい状態になります(供給が多くなる)しかし、みんなはお金よりモノが欲しい状態。ですのでお金の価値が低くなりすぎている状態といえます。
なので、お金の循環を悪くするために強制的に金利を(お金の価値)を上げるのです。
未曾有の利上げで急騰したアメリカドル
実際にアメリカでは、コロナショックからの急速な回復によって、一気に出費が増え、急激なインフレに見舞われました。
下図はアメリカの消費者物価指数(CPI)で、物価を表しています。同年前月比では9%物価が上がっており、この数値は80年代以来の高インフレとなっています。
この未曾有のインフレつまり物価高に対抗するために、FRBは強制的に通貨の価値を上げる行為。つまり利上げを迅速かつ大幅に行っている最中です。
この大幅な米ドルの利上げによって、ドルは通貨高になりました。一方日本では先進国の中で唯一、金融緩和政策を持続しており利下げ状態(マイナス金利)状態を維持しています。
このドル高、円安ファンダメンタルズによって、ドル円は急騰しました。
よって、金利が上がる場面なのか、金利が下がる場面なのかをファンダメンタルズから読み取るだけでもコロナ後の相場では勝てていたことになります。
このファンダメンタルズを知っていると知らないとでは、かなりの知識の差が生まれることになります。特に政策金利などのファンダメンタルズの方向が切り替わるタイミングでは敏感に反応するので、経済指標にアンテナを立てるべきなのです。
まとめ
金利は通貨のファンダメンタルズ。金利が高い通貨は価値が高い。
金利が低い通貨は売られ、金利が高い通貨は買われる傾向にある。
物価高の状態をインフレーション(インフレ)という。相対的にお金の価値が下がっている状態。
物価安の状態をデフレーション(デフレ)という。相対的にお金の価値が上がっている状態。