日銀総裁人事の方針が固まる
各報道機関によると、次期総裁候補とされていた雨宮氏などはではなく、植田和男氏に白羽の矢を立ったようです。
国会承認は2月14日
ただし、現段階では岸田総理の「案を固めた」という表現に留まっています。
2月14日(火)の午前11時に人事案が提出され、衆参両院での承認の後に、2月24日と27日に所信聴取(質疑)が予定されており、正式に総裁として就任するには24日以降となります。
ポイント:日銀のメンバーを決めるのは総理大臣。総理大臣が考えた案は、衆参両院で承認を得て正式に採用される。
植田和男氏はどんな人物?
国内、海外どちらも植田氏就任の予想はされておらず、完全にダークホースとなり、発表時円相場は乱高下しました。
今後の総裁のマインドを知るためにも植田氏について調べていきます。
植田氏の略歴
植田 和男(うえだ かずお、1951年9月20日 – )は、日本の経済学者。専門はマクロ経済学、金融論。東京大学名誉教授。日本銀行政策委員会審議委員、東京大学大学院経済学研究科長などを歴任。静岡県出身。
1998年には日本銀行政策委員会審議委員に就任し、バブル崩壊の影響で大手金融機関の破綻が相次ぐ不況の中、速水優総裁によるゼロ金利政策や量的金融緩和政策の導入を政策委員会の理論的支柱として支えた。2000年の金融政策決定会合おいてはゼロ金利政策の解除に対し反対票を投じた[3]。
Wikipediaより引用
植田氏は過去に、日本銀行製作委員会に在籍しており、金融政策運営の中枢人物といえる人物です。
過去には、ゼロ金利政策、金融緩和政策推進派でハト派であることが伺えます。
もともと学者というところから理論的に、バランスを保ちつつ政治を行う人物であると言われています。
単なるハト派ではない?
メディアの囲み取材に対して現在の金融政策は正しいとコメントを残しており、継続の必要性も訴えました。
このコメントだけを切り取るとハト派のようにも捉えられますが、過去にはYCCに苦言を呈するなど、単なる金融緩和賛成のハト派とは言えないようです。
脱アベノミクスの意向がある?
東大の植田和男教授は、通常の歓迎スピーチの機会 に、わざわざ メモ を用意して、「長期金利の0%の金利のペッグ( マイナス 金利政策 と イールドカーブ・コントロール で、 長短金利 をある程度固定していることをペッグと表現した ─ ─ 筆者注) がハイパーインフレを引き起こす。 金融機関経営が厳しくなり、金融仲介機能を壊して経済を悪化させる」と述べた。
デフレと闘う 日銀審議委員、苦闘と試行錯誤の5年間|原田泰 より引用
『デフレと闘う』より植田和男氏の過去の発言を取り上げると、マイナス金利政策とYCC(イールドカーブ・コントロール)について否定的なコメントを寄せています。
金融緩和には賛成しているが、リフレ派ではない。
リフレ派とは:リフレーション政策に賛成している人のこと。
リフレーション政策とは:デフレ脱却を目指した金融政策方針で、マイルドなインフレを起こし、経済成長を促す考え方。積極的に金融緩和を行いデフレ脱却を目指す。アベノミクスで大きく打ち出された。
上記から考えると植田氏はハト派タカ派、よく言えばバランスを保っている、悪く言うと一貫性が無いとも言えます。
また、金融政策を、雇用のために行うのか、金融業界(金融システムの正常化)のために行うかでも考え方は変わってきます。
植田氏は「 金融機関経営が厳しくなり、金融仲介機能を壊して」というコメントから金融業界よりに目が向いている捉えられます。
直近の岸田総理の新NISA制度の改革を見ると、岸田総理も金融業界に目が向いていると考えられます。
よって、植田氏の就任は、岸田総理の「脱アベノミクス」の意向が反映したものと推測できます。
今後の日本経済はどうなる?
正式に植田氏が日銀総裁に就任した場合は、直ちには現在の黒田総裁が行う異次元緩和政策から大きく外れた政策は行わないと考えられます。
ハト派の言動をするとなれば、円安・株高方向へと動きやすいですが、アベノミクスからの脱却が岸田総理の目指す所である場合、YCC(イールドカーブ・コントロール)の修正など、大規模金融緩和の出口戦略を見据えた政策を行う可能性もあります。
しかしながら、金融緩和終了=利上げ=株安につながることから岸田総理自身が利上げを望んでいるとも考えにくく、2023年の政策金利発表を何度か通過してから、植田氏の方針を慎重に判断することが重要です。
また、今後の日本の経済状況によっては方向転換が行われる可能性が常にあることには注意を払いましょう。
まとめ
- 次の日銀総裁は植田和男氏
- 金融緩和推進派のハト派
- 直ちには黒田総裁が行った異次元緩和政策から大きくズレた政策を行わない